屋根の出(軒の出)と住宅の耐久性

昨日のブログで、
「最近電車の車窓から見ていると首都圏を離れた敷地に余裕のある土地に建てられた住宅でも、
屋根の出(軒の出)が無い、いわゆる軒ゼロ住宅をよく見かける」
と書いたが、なぜ軒ゼロ住宅は問題があるのかを説明する必要があると思う。

説明の前に、都会の住宅の土地はほとんどが狭小だ。
そのうえ建築の法規的な制約も多い。
というよりもお互いの住環境を確保する必要があるために建築の法規的な制約も多いともいえる、
そのため狭小ゆえに、軒を大きく出すことにより建築の法規的な制約にかかって、住宅として
使える面積が小さくなってしまう場合がある。
その場合でも極力軒の出を確保したほうが良い。

参考図面(東京都内)で去年の暮れに完成した住宅の断面図です。
北側斜線に上を抑えられていますので結果的に使える部分に制約が出てきなスが、なるべく軒を出すようにしている。

参考写真(横浜市内)の住宅です。
この住宅も北側斜線、居室の採光など法的制約がありますが、
なるべく軒を出すようにしている。

参考写真(静岡県の郡部)で去年に完成した住宅の工事中の写真ですが、
この窓の外の軒は1m20センチ出しています。
大工さんが、雨が降っているとき窓を開けっぱなしにしておいても雨が入ってこないと言っていました。

そもそも住宅の第一の機能として雨露をしのぐためにある、といえると思います。
建物が早く痛む原因としても雨は大いに影響しているといえます。
ですので、なるべく雨に濡れる部分を減らすことが建物の耐久性も向上させることになります。
例えば、性能表示の土台(木造部分の一番下、基礎と接する木材)の劣化を軽減するための措置として、
軒の出を90センチ以上にした場合は劣化を軽減する措置と認めるという規定があります。
階数にかかわらず適用できる規定です。
ある一定の軒の出が有る場合は、
壁の最下部の劣化の軽減にも軒の出がかかわるということになります。

軒の出と劣化の軽減以外に、軒ゼロ住宅は雨漏りに対して注意が必要です。
安易に軒の出が無い住宅を造ることは雨漏りに対してのリスクが高まります。
都会的でスタイリッシュな外観=軒ゼロと安易に考えないことです。
まずは、設計段階で軒を出してもスタイリッシュな外観となるようなディテールを考えるべきです。
どうしても軒を出せない場合、軒の出ていないデザインにしたい場合は、
雨仕舞対策を設計段階で万全に行っておく必要があります。